ギリシャ・ローマ神話物語
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カリュブディスの神話 | キルケの警告から渦との再会まで

一艘の船が狭い海峡へと入っていきます。片側の断崖には何が住んでいるのか分からない洞窟が口を開け、反対側の海は不思議なほど穏やかだったかと思うと、突然まるごと吸い込まれるように渦を巻きます。

オデュッセウスは、すでにキルケからこの区間を通らねばならないと聞いていました。問題は、この海峡を何の損害もなく通過する方法がないということでした。どちらへ進んでも何かを差し出さねばならなかったのです。

キルケの警告、選択ではなく代償を選ぶ問題

オデュッセウスが故郷へ向かう航路を改めて尋ねると、キルケはこれから通る区間を一つずつ指し示してくれます。その中で最も重い警告だったのが、スキュラとカリュブディスが向かい合う狭い海峡でした。

キルケはこの二つの危険を並べて説明し、片側は六つの頭を持ち、海峡を通る船から水夫をさらっていく存在だと言いました。反対側は海水を一日に何度も飲み込んではまた吐き出す巨大な渦だと説明したのです。

ここでキルケが強調したのは、二つの危険の大きさの違いでした。渦のほうへ船を進めれば、水夫数人どころか船全体とすべての仲間が一瞬にして消えうると警告します。

一方、反対側の断崖の下を通れば確実に何人かは失うものの、残りは生きて航海を続けられるというものでした。つまりこれは危険を避ける選択ではなく、どちらの損失を引き受けるかをあらかじめ決めておく話だったのです。

海峡の真ん中で、船を操りながら隠さねばならなかった事実

実際に海峡へ入ったオデュッセウスは、キルケの言葉を仲間たちにはそのまま伝えませんでした。断崖の側に正確に何が待っているのかを知らせれば、オールを漕いでいた手が止まったり、仲間たちが怯えて船が制御を失いかねないと判断したからです。

代わりに彼は武装を整え、船首に立って断崖のほうを見つめます。まるで一人でも立ち向かえるかのような態度でしたが、この戦いはそもそも人間の力で防げる種類のものではありませんでした。

船は渦の側の海を避け、断崖に沿って進む航路を選びます。カリュブディスが飲み込んだ海水を再び吐き出す光景を目の前で見ながらも、そちらへは決して近づかないことが唯一の原則でした。その代わりに払うべき代償が反対側で待っていたのです。

六人が消える瞬間

船が断崖の下を通るその短い区間で、洞窟の中の存在が六つの頭を一斉に伸ばし、水夫たちを咥え上げます。頭一つにつき一人ずつ、最も優れた船乗り六人が同時に口に咥えられたまま引き上げられました。

オデュッセウスが手を出す暇もなく起こった出来事でした。断崖の上へ引き上げられながら、自分の名を呼ぶ仲間たちの声を聞いたと伝えられています。船全体を守るために引き受けることにしていた損失が、目の前で具体的な顔と名前として確認される瞬間だったのです。

この場面が重く残る理由は、単に人数が減ったという事実だけではありません。オデュッセウスはこの危険を知りながら仲間たちに完全には告げておらず、結果的にその判断が的中して船全体の破壊は免れました。

しかし、そうして守り抜いた航海がほどなくしてまったく別の理由で再び崩れ落ちるという点で、この最初の通過は物語の終わりではなく、次の危機へと移る橋に近いものです。

トリナキアの牛の群れ、守るべきだった最後の掟

海峡を離れた船は、太陽神の家畜が放牧される島に到着します。キルケはもちろん、預言者テイレシアスの霊までもが、この島の牛や羊には手を触れるなと繰り返し警告していた場所でした。

オデュッセウスも仲間たちに同じ警告を伝え、そのまま通り過ぎようと言いましたが、向かい風に足止めされて島に長く留まるうちに食料が尽きてしまいます。結局、オデュッセウスが一時その場を離れた隙に、飢えに耐えかねた仲間たちが禁じられた家畜に手を伸ばしてしまったのです。

先の海峡では予告された危険を引き受ける選択でしたが、今回は守ると決めていた掟が崩れた出来事でした。そしてこの違いが、続く結果の性質を完全に変えてしまいます。

ゼウスの雷霆と、ひとり残された海

島を離れて再び海へ出た船を最初に襲ったのは、西から吹き付けた突風でした。マストを前方から支えていた綱が切れてマストが後ろへ倒れ、その下にいた操舵手がもろに打たれて命を落とし、船の外へ落ちていきました。

ゼウスの雷霆が船を打ったのはその次でした。船はその場で粉々に砕け、仲間たちは次々と水の中へ落ちていきました。オデュッセウスが見回したとき、残っていたのは自分だけでした。

彼は折れたマストと竜骨を皮の紐で縛り合わせ、やっと体を支えられる程度の筏を作ってそれに乗り移ります。ここからは選択の物語ではなく、漂流の物語へと変わっていきます。

風と潮流が運ぶにまかせて漂うほか、できることがなかったのですから。そしてその潮流が彼を再び連れて行った先が、先ほど一度避けて通ったあの渦だったのです。

再び戻ってきたカリュブディス、夜明けのイチジクの木

風が方向を変えると、オデュッセウスは夜通し潮流に運ばれて漂います。そうして夜を越えた末、夜明け頃に彼は再びカリュブディスのいる海峡へとたどり着きました。

今度は仲間も、漕ぐ船もなく、砕けた筏の破片ひとつにすがる状態でした。渦がその破片までも飲み込もうとするその直前、彼は海峡の上に枝を伸ばしていたイチジクの木の枝をつかみ、体を引き上げます。

足を踏み場もない体勢で木の枝にしがみついたまま、筏が渦の中へ吸い込まれていく様子を見守るほかありませんでした。この瞬間、オデュッセウスにできることはただ一つ、耐えることだけでした。

筏をつかんだまま一緒に飲み込まれていたら、それで終わりだった状況でした。代わりに彼は、渦が飲み込んだ海水と筏の破片を再び吐き出すまで待つ道を選びます。

筏を取り戻して脱出した後

長いことしがみついて待った末、渦が筏の破片を再び水面へと押し上げます。その瞬間を逃さず、オデュッセウスはつかんでいた手も足もすべて離して筏のすぐそばの海へ落ち、すぐにその上に乗り移ります。

それから手で水をかいて、渦の範囲の外へと抜け出します。船も仲間もすべて失い、一枚の板で生き延びたのです。

この場面が先の海峡通過と対をなすのは、同じ渦を二度、異なるやり方で出会うからです。最初は仲間たちとともに船を守るためにあらかじめ決めた航路で避けて通った危険でした。

二度目はその船も仲間も消えた後、自分の力だけで同じ危険を再び耐え抜かねばならなかった瞬間でした。その後オデュッセウスは筏にすがってさらに数日漂流し、別の海岸にたどり着いて帰還の道の次の段階へと進んでいくことになります。

次の物語へとつながる人物たち

断崖の反対側で六人の仲間を咥え去った存在の正体は、スキュラの神話でより詳しく扱います。この海峡に入る前、歌の声で水夫たちを誘惑していたもう一つの危険は、セイレーンの神話で確認できます。

この警告を最初に与えた人物の物語はキルケの神話まとめで、この出来事が帰還の旅全体の中でどこに位置するのかはオデュッセウスの旅路マップで併せてご覧いただけます。