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パリス神話 | パリスの審判・黄金の林檎・ヘレネ・トロイア戦争の原因まとめ

ある結婚式の宴に招かれなかった女神が、林檎を一つ投げ入れます。その林檎に書かれたたった一行の言葉のせいで三人の女神が争い始め、その争いを裁く審判に指名されたのがパリスでした。

パリスはこの審判で下した一つの選択によってヘレネと結びつき、やがてトロイア戦争の原因として語り継がれる人物になります。この記事では、その選択がどのように続いていき、後の戦場でどのような結果として戻ってくるのかを順にたどってみます。

ペレウスとテティスの結婚の宴、投げ入れられた黄金の林檎

アポロドーロスが伝える伝承によれば、不和の女神エリスはペレウスとテティスの結婚の宴に招かれませんでした。そこで彼は宴のまっただ中へ黄金の林檎を一つ投げ入れます。

この林檎をめぐって、ヘラ、アテナ、アプロディーテの三人の女神が、自分のものだと主張して争い始めます。三人とも最高神ゼウスの近い位置にいる存在だっただけに、この争いは誰にも簡単に終わらせられない問題でした。

ゼウスがパリスに審判を委ねた事情

三人の女神のうち誰の側にもつくことができなかったゼウスは、この判定を自ら引き受けることを避けます。代わりに、トロイの王子であったパリスにこの審判を委ねました。

ゼウスにとっては、どちらを選んでも残りの二人の女神の恨みを買わざるを得ない立場だったのです。その重荷を背負わされたのが、まさにパリスでした。

三人の女神の提案とパリスの選択

審判を任されたパリスの前で、三人の女神はそれぞれ異なる提案を差し出します。林檎を自分に渡せば、それに見合う報酬を与えるというものでした。

パリスはこのうちアプロディーテの提案を受け入れます。アプロディーテが掲げた条件は、世界で最も美しい女を得させようというもので、その女こそスパルタのヘレネでした。

問題は、ヘレネがすでにスパルタの王メネラオスと結婚していたという点です。パリスの選択は、一つの林檎を選ぶところで終わらず、すでに結婚した女をめぐる争いにつながる条件を一緒に選んでしまったのです。

ヘレネをめぐる争いが戦争へと拡大する

パリスがヘレネとともにトロイへ帰っていくと、スパルタ側ではこの一件をそのまま見過ごせない出来事として受け止めます。ヘレネを連れ去ったことが、そのままメネラオスとギリシアの諸王にとっての開戦の名分となってしまったのです。

この箇所では伝承ごとに細部は少しずつ異なって伝えられますが、黄金の林檎の審判一つがトロイア戦争という大きな出来事の原因へとつながるという流れそのものは共通して確認できます。そしてその戦争のまっただ中で、パリスはヘレネの本来の夫であったメネラオスと直接対峙することになります。

イリアス第3歌、決闘で決着させようという合意

イリアス第3歌で、両軍は長い戦争を終わらせる方法として一つの合意に達します。パリスとメネラオス、この二人が直接決闘を行い、その結果でヘレネの居所を定めようというものでした。

この合意に従い、二人は武具を身につけ、両軍が見守る中で向かい合います。長い間先送りされてきた決着を、この一度の決闘でつける瞬間でした。

決闘のただ中で、傾いていく勝敗

最初に槍を投げたのはパリスでしたが、メネラオスの盾に防がれて穂先が折れてしまいます。続いてメネラオスが投げた槍はパリスの盾を貫き、鎧の裾をかすめましたが、パリスは身をかわして命をつなぎます。

今度はメネラオスが剣を抜いてパリスの兜を打ち下ろしますが、剣はその場で折れてしまいます。剣を失ったメネラオスは、代わりにパリスの兜の飾り紐をつかみ、自軍の陣へ引きずっていこうとします。

パリスは首を絞められんばかりに引きずられる身となり、このままでは決闘はメネラオスの勝利に終わる状況でした。ところがパリスの兜の紐が喉の下で切れ、メネラオスの手には空の兜だけが残されます。

アプロディーテの介入、霧の中へ消えたパリス

まさにこの瞬間、アプロディーテが立ち上がります。パリスを濃い霧で包んで両軍の目から完全に隠したうえで、彼をトロイの城内にある香りのよい部屋へ運び込みます。

メネラオスは手にした空の兜だけを残し、消えたパリスを探して戦場をさまよいます。しかしトロイの兵士は誰も彼をかくまわず、メネラオスは人々の中から彼を見つけ出せません。

ヘレネの部屋、再び続いた物語

アプロディーテは今度は老女の姿に変わってヘレネのもとを訪れ、パリスのいる部屋へ行くよう誘います。ヘレネはつい先刻まで戦場で押されていたパリスの姿を知っていたため、最初は足取りが軽くありませんでした。

部屋に入ったヘレネは、パリスに対して決闘に負けた者らしくメネラオスに再び立ち向かってみよという意味をほのめかします。パリスは、今回はアプロディーテが自分を助けただけで、次には別の結果がありうる、という趣旨で答えます。

結局、二人は同じ部屋にとどまる形でこの場面を締めくくります。戦場では命が行き交う寸前だった瞬間が、城内ではまったく別の結末へとつながったのです。

決闘は終わったが戦争は終わらなかった

両者が合意した通りであれば、この決闘の結果によって戦争全体が片づくはずでした。しかしパリスが霧の中へ消えてしまったため、決闘は勝敗を完全に決められないままうやむやになってしまいます。

メネラオス側からすれば、自分が勝った決闘だったと主張できる状況でしたが、相手が消えてしまった以上、その主張を確定させる方法がありませんでした。結局、両軍は再び武器を手にすることになり、戦争はこの決闘の後も続いていきます。

パリスのその後の生涯とヘレネとの関係が正確にどのように終わるのかは、伝承ごとに細部が異なり、今回の資料の範囲では一つに確定するのは難しいところです。ただ、黄金の林檎の審判から始まった選択が決闘の場面まで一本につながっているという流れだけは、原典ではっきり確認できます。

次の物語へつながる人物たち

パリスの選択によってトロイへ来ることになったヘレネの物語は、ヘレネ神話でさらに詳しく確認できます。パリスが審判で選んだ女神、そして決闘の場面で彼を救い出したアプロディーテの物語は、アプロディーテ神話で続きを見ることができます。

パリスとともにトロイの城内にいた兄弟、ヘクトルの物語は、ヘクトル神話で確認できます。